独占本能が目覚めた外科医はウブな彼女を新妻にする
当事者である私を差し置いて、西野さんと会ったと聞いただけでも驚いた。それなのに前方を見つめたまま、そんな重要なことをサラリと言われては、困惑してしまうのは当然だ。
「もう華には近づかないという条件で製薬会社を紹介した。くるみ薬局より待遇がいいし、彼女もそれで納得してくれたよ」
どうやら西野さんが自ら退職を申し出たわけではなく、樹先生が辞めるように手を回したようだ。
西野さんを追い払うような気がしてモヤモヤする。でも彼女に対する不信感は拭えないし、同じ職場で働くのは怖い。
「……ごめんなさい」
「どうして華が謝るの?」
「だって……」
仕事が忙しいなか、手筈を整えるのは大変だったはずだ。
「言ったろ? どんな手段を使っても華を守るって」
「……」
樹先生の部屋で泣いたとき、『華のことは俺が守る。どんな手段を使っても……』という言葉を、たしかに聞いたことを思い出した。
いつも甘えてばかりで心苦い。
「これで西野さんの話は終わりにしよう」
「……はい」
膝の上にのせていた手をキュッと握られる。
いつか樹先生の身に困ったことが起きたときは、必ず私が力になる。そう心に誓った。