独占本能が目覚めた外科医はウブな彼女を新妻にする
これ以上、雨がひどくならないように心の中で祈っていると、大粒の滴が頭と肩にあたり始めた。
これじゃあ、中華街デートは無理かもしれない……。
突然の雨が恨めしい。
「急ごう」
「はい」
樹先生に手を引かれて駐車場に向かって駆け出した。しかし雨足はますます強くなるばかり。しかも目の前で稲妻がピカリと走り、頭の上で大きな雷鳴が轟いた。
その衝撃はすさまじくて「キャッ」と悲鳴をあげながら、その場にしゃがみ込む。
雨は冷たいし、雷は怖いし、もう嫌だ……。
泣き出したい気分に駆れていると、樹先生の腕が背中に回った。
「大丈夫だから落ち着いて」
「は、はい……」
私を心配する声を聞き、寄り添う体温を感じたら、身勝手な行動を取っている場合じゃないと気づいた。
「あと少しがんばれる?」
「はい」
コクリとうなずき、手を借りて立ち上がる。
本音を言えば雷はまだ怖い。でもこれ以上、困らせたくない。
降り続く雨のなか、樹先生と手を繋ぎ直して再び走り出した。