独占本能が目覚めた外科医はウブな彼女を新妻にする

これ以上、雨がひどくならないように心の中で祈っていると、大粒の滴が頭と肩にあたり始めた。

これじゃあ、中華街デートは無理かもしれない……。

突然の雨が恨めしい。

「急ごう」

「はい」

樹先生に手を引かれて駐車場に向かって駆け出した。しかし雨足はますます強くなるばかり。しかも目の前で稲妻がピカリと走り、頭の上で大きな雷鳴が轟いた。

その衝撃はすさまじくて「キャッ」と悲鳴をあげながら、その場にしゃがみ込む。

雨は冷たいし、雷は怖いし、もう嫌だ……。

泣き出したい気分に駆れていると、樹先生の腕が背中に回った。

「大丈夫だから落ち着いて」

「は、はい……」

私を心配する声を聞き、寄り添う体温を感じたら、身勝手な行動を取っている場合じゃないと気づいた。

「あと少しがんばれる?」

「はい」

コクリとうなずき、手を借りて立ち上がる。

本音を言えば雷はまだ怖い。でもこれ以上、困らせたくない。

降り続く雨のなか、樹先生と手を繋ぎ直して再び走り出した。

< 107 / 214 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop