独占本能が目覚めた外科医はウブな彼女を新妻にする
なんとか駐車場にたどり着いたものの、頭から爪先まで濡れてしまった状態で、助手席に乗り込むのは気が引ける。
躊躇っていると、樹先生がドアをすばやく開けた。
「早く乗って」
「で、でも…・・・。あっ!」
強引に背中を押され、なだれ込むように助手席に座るとドアがパタンと閉まった。
車のことはよくわからない。けれど鮮やかな赤が際立つスポーツタイプのこの車は、きっと高級車に違いない。
それなのに、シートを濡らしてしまうなんて……。
体にまとわりつく濡れた服を不快に思いながら、申し訳なく思った。
「寒くない?」
「大丈夫です」
運転席に乗り込んだ樹先生が、雨で濡れた髪を掻き上げる。彼も私と同じように、全身ずぶ濡れだ。
バッグからハンカチを取り出し、滴が落ちる髪に手を伸ばす。けれど一瞬のうちに手首を掴まれ、ハンカチを取り上げられてしまった。