独占本能が目覚めた外科医はウブな彼女を新妻にする
「乾杯」
黄金色のシャンパンが注がれたグラスをカチンと合わせる。
六人がけの大きなテーブルの上には、スモークサーモンのサラダとオニオンスープ、黒毛和牛のフィレステーキが並んでいる。
ルームサービスを利用するのは初めて。プライベートな空間で、こんな贅沢な料理を食べられるとは思ってもおらず、興奮気味に声をあげた。
「おいしそうですね」
「そうだね」
突然のハプニングに見舞われたものの、これはこれで楽しい。
ふたりの思い出がひとつ増えたことをうれしく思いながら、シャンパンと料理を味わった。
「明日、中華街に行こうか?」
「はい! 行きたいです!」
様々な中華料理店が軒を連ねる通りを、樹先生と一緒に見て回れると思っただけで心が弾む。
『今日はこのまま泊まらない?』という誘いを断って帰っていたら、中華街には行けなかったんだ……。
ホテルでひと晩過ごすと決めて、よかったと思った。