独占本能が目覚めた外科医はウブな彼女を新妻にする
「じゃあ、おやすみ」
朗らかな笑みを浮かべ、私に背中を向ける。
えっ、待って。どうしてベッドルームから出て行こうとするの?
慌てて上半身を起こし、手を伸ばした。
「どこに行くの?」
樹先生のバスロープの袖をギュッと掴む。
「俺はリビングのソファで寝るよ」
隣で眠ることを拒否され、胸がズキリと痛んだ。
興味を持たれていないとわかってはいたけれど、あからさまに避けられては、やはり傷つく。
「……どうして? 私、そんなに魅力ない?」
バスロープが乱れた姿を見ても、普段となにも変わらず冷静でいる彼に不満が募り、大胆な言葉が口を衝いて出てしまった。
自分から誘うようなことを言ってしまった手前、もう後には引けない。
どんなことになってもいいという覚悟を決めて唇をキュッと結ぶと、彼の瞳を真っ直ぐ見つめた。
「人の気も知らないで……」
樹先生が視線を逸らし、髪をクシャリと掻き上げる。
その様子は怒っているように見えて怖い。
きっとウザいと思ったんだ。嫌われたくないのに……。