独占本能が目覚めた外科医はウブな彼女を新妻にする
「ご、ごめんなさい」
樹先生の姿を見るのがつらくなり、頭から布団をかぶると背中を向けた。
変なことを言うんじゃなかったと悔やんでも、もう遅い。
鼻の奥がツンとして、涙が込み上げてきてしまった。
キングサイズのベッドはひとりで眠るには大きすぎるけど、泣き顔を見られずに済むのは都合がいい。
布団の中で目尻に伝った涙を拭った。
もう、アレコレ悩むのはやめよう。樹先生に拒絶されたことは深い眠りの底に葬り去って、綺麗に忘れてしまえばいい。そうすれば、明日は笑って向き合える。
眠りに就くために、瞼をギュッと閉じた。
けれどバサリと音を立てて、勢いよく布団を剥がされてしまう。
いったい、なにが起きたの?
目を見開いたまま動けずにいると、樹先生がゆっくりと覆いかぶさってきた。
「煽った責任、取ってもらうよ」
「……っ!?」
心臓がドクドクと鳴り響く。
煽ったつもりはないし、責任と言われても、どうしたらいいのかわからない。
熱をはらんだ瞳を見つめることしかできず硬直していると、樹先生の唇が私の唇にふわりと重なった。