独占本能が目覚めた外科医はウブな彼女を新妻にする
瞼を閉じる間も与えられない性急なキスが信じられない。まばたきを繰り返しているうちに、触れ合っていた唇がスッと離れていった。
私、樹先生とキスしたんだよね?
あまりにも唐突で短いキスに実感が湧かない。
「……もっと、いい?」
「えっ?」
一度は私を拒んだくせに“もっと”を求められても困る……。
どのような返事をしたらいいのか頭を悩ませていると、再び唇を塞がれてしまった。
「……んっ」
いつも穏やかな樹先生とは異なる強引な一面をうれしく思いながら、隙間なく重なった唇の端から吐息を漏らして夢中でキスに応えた。
先ほどの短いくちづけとは違い、二度目のキスはどのタイミングで息をすればいいのかわからないほど長い。
瞬く間に体の力が抜けてしまい、頭が真っ白になってしまった。
「大丈夫?」
「……はい」
唇が離れても、キスの余韻は冷めない。好きという気持ちだけが、苦しいほど胸いっぱいに広がった。
樹先生が隣に体を横たえ、背中に回した腕にキュッと力を込めて抱きしめてくれる。
ああ、幸せ……。
温かくて逞しい胸に甘えるように頬を寄せると、夢心地で瞼を閉じた。