独占本能が目覚めた外科医はウブな彼女を新妻にする

「おはよう」

「……おはようございます」

目が覚めて条件反射で返事をしたものの、どうして樹先生が隣にいるのか、すぐには思い出せなかった。

昨日はたしか……。

おぼろげな記憶をたどると、昨夜の出来事が鮮明によみがえってきた。

私、樹先生に抱きしめられながら、眠っちゃったんだ……。

キスを交わしたことも、肌に感じる樹先生の体温も、寝顔を見られたことも、なにもかもが恥ずかしい。

布団を手繰り寄せて背中を向けると、熱く火照った顔を隠す。けれど昨夜と同じようにバサリと音を立てて、勢いよく布団を剥がされてしまった。

「おはようのキスしようか?」

樹先生が私に覆いかぶさり、爽やかな笑顔で言う。

「えっ?」

「朝からキスするのは嫌?」

「嫌じゃないけど……」

「じゃあ、目を閉じて」

「……はい」

積極的な樹先生に戸惑いつつも言われた通りにすると、閉じた瞼の上にくちづけが落とされた。

予期せぬ箇所へのキスに驚き、ピクリと体を跳ね上げて目を開けた。

「改めて、おはよう」

「おはよう……ございます」

恥ずかしげに挨拶を返すとすぐに唇を塞がれてしまった。

ああ、朝から幸せ……。

甘いくちづけにうっとりしながら、瞼を再びゆっくり閉じた。

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