独占本能が目覚めた外科医はウブな彼女を新妻にする

「美咲のよさがわからないなんて、そんな男と別れて正解だよ!」

テーブルをドンと叩いて熱く語る。

「ありがとう。こうなったら華の結婚式でいい男性(ひと)見つけるからっ!」

「そ、そうだね」

今にも泣き出しそうだったことが嘘のように張り切り出した美咲に圧倒されていると、料理が運ばれてきた。

「いただきます」

早速、アヒポキ丼を味わう。

しょう油ベースの味つけがご飯にとてもマッチしていて箸が進む。

「ん~、おいしい!」

頬を緩めていると、美咲がフフッと笑った。

「それで、樹先生とはどこまでいったの?」

美咲には、夏休みに樹先生と出かけたことはまだ話していない。

「一昨日、横浜の水族館に行ったんだけど、ゲリラ豪雨に遭って……」

「そうじゃなくて、もう一線を超えたのかって聞いてるの」

思いがけずホテルに泊まることになった経緯を説明しようとしたものの、口を挟まれてしまった。

『どこまで』って、そういう意味だったんだ……。

露骨に聞かれると照れくさい。黙ったまま料理を口に運んだ。

「ひょっとして、キスもまだとか?」

「まさかっ! あ……」

ついムキになって反論する私を見て、美咲がほくそ笑む。

挑発にのって、樹先生とのキスを認めてしまったことを恥ずかしく思った。

「そっか。よかったね」

「ありがとう」

彼氏と別れてつらいはずなのに、私を応援してくれる美咲の言葉がうれしかった。

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