独占本能が目覚めた外科医はウブな彼女を新妻にする
会食が終わると父親が「ふたりで庭園を散歩してきたらどうだ?」と言い出した。
樹先生が「はい」と返事をして立ち上がり、手を差し伸べてくれる。
「行こうか」
「はい」
夏休みが終わってから、ゆっくり会ったのは一回だけ。久しぶりに見る爽やかな笑顔は、やはりカッコいい。
胸を高鳴らせながら、彼の手を借りて立ち上がると、エスコートに従って日本間をあとにした。
振袖姿の私の歩幅に合わせてゆっくりと歩いてくれる樹先生と、手入れが行き届いた日本庭園を散策する。
九月に入り、ひと頃の暑さに比べればだいぶしのぎやすくなった。それでも振袖の下に長襦袢を身に着け、さらに帯をきつく締め上げられていては、さすがに暑い。
「暑いよね? 中庭に行こうか」
「はい」
額に薄っすらと汗を掻いている私に気づいたくれた樹先生に手を引かれ、池にかかる朱色の橋を渡って中庭に向かった。