独占本能が目覚めた外科医はウブな彼女を新妻にする
木の葉で日光が遮られ、脇に小川が流れているこの場所は、ひんやりとした空気に包まれている。
「涼しいね」
「はい」
ホッとひと息つきながら、赤い布が覆い被さったベンチにふたりで腰を下ろした。
「華やかな着物が似合っていて、とても綺麗だよ」
暑さから解放された途端、褒めてくれる気遣いがうれしい。
「ありがとうございます」
今まで何度か『かわいい』と言われたことはあるけれど、『綺麗』と言われたのは初めてで、なんだか照れくさい。
振袖と合わせた牡丹柄の和装バッグの持ち手をキュッと握り、お礼を伝えた。すると樹先生がジャケットのポケットから正方形のケースを取り出す。
それはサイズ調整が終わったエンゲージリングで、日本間の上座に結納品として並べられていたはずだ。
いつの間に……。
知らないうちに持ち出していたことに驚いていると、樹先生が蓋をパカリと開けた。
「綺麗……」
ハート型の大きなダイヤモンドが、木漏れ日の光を受けてキラキラと輝く。