独占本能が目覚めた外科医はウブな彼女を新妻にする
「……これって、もちろん義理チョコだよね?」
はっきりと『本命チョコ?』と聞けないことが情けなくて、小さくうなだれた。
「違います! 本命チョコです」
えっ? 本命?
信じがたい返事を聞き、心臓が狂ったように暴れ出した。
これは恋だ。かわいらしい妹がいる誠をうらやましく思ったのも、うぶな反応を見て全力で抱きしめたくなったのも、彼女に恋しているからなんだ……。
耳まで真っ赤にしてうつむく彼女からチョコを受け取り、その小さな体を胸の中に閉じ込めたい欲望に駆られてしまった。
しかし相手はひと回り年下の中学生だ。今は勉強や学校生活を最優先しなければならない。
「華ちゃん、ごめんね。これは受け取れない」
今は無理でも、数年後にお互いの気持ちが変わらないままだったら、そのときは俺のほうから好きだという思いを伝えよう。
そのことを彼女に告げようとした矢先、頭を下げられてしまった。
「……迷惑かけてごめんなさい」
迷惑だなんて少しも思ってない。むしろ、うれしかったのに……。
『義理チョコだよね?』と、聞かないで、笑顔でありがとうと、軽くもらっておけばよかった……。
目の前から走り去る彼女の後ろ姿を見つめながら後悔した。