独占本能が目覚めた外科医はウブな彼女を新妻にする

「高校を卒業したら、二十歳を過ぎたら、大学を卒業したらって、何度も告白しようとしたんだけど……。華のことになると臆病になってしまうから困るよ」

樹先生が苦笑する姿を黙って見つめ続けた。

「でも酔って加藤君にもたれかかる華の姿を見てすごく焦った。早く俺だけのものにしないと、ってね」

私を見つめてニコリと微笑んでくれたものの、すぐに視線を逸らされてしまった。

もしかしてこれって、照れているんじゃない?

どんなときも冷静沈着な彼が恥ずかしがる姿を見るのは初めてで、胸がキュンと締めつけられた。

それにしても、あの性急なプロポーズにそんな理由があったなんて……。

ずっと前から相思相愛だったことが、いまだに信じられない。

「よかった。次期副院長の座を狙っているわけじゃなかったんだ……」

「ん? なに?」

樹先生に顔を覗き込まれて、心の声が口から漏れていたことに気づいた。

「い、いいえ。なんでもないです」

誠実な彼を疑ってしまったことに後ろめたさを感じながら、慌てて首を左右に振った。

< 159 / 214 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop