独占本能が目覚めた外科医はウブな彼女を新妻にする
うれしい痛み
結納が無事に終わり、迎えた約束の土曜日。
カードキーでロックを解除して樹先生の家に上がり、スーパーで買ってきた食材を調理台に並べた。
今日の夕食はきのこの和風パスタと、トマトとモッツァレラチーズのサラダだ。
作り方の動画を見るためにバッグからスマホを取り出すと、タイミングよくメッセージが届いた。
【今から帰る】
樹先生からの短い帰るコールがうれしい。
【気をつけてくださいね】
なんだか照れるな……。
ひとりでニヤつきながらメッセージを返した。
病院からマンションまでの距離は徒歩十五分。脚の長い樹先生なら、そんなにかからないかもしれない。
新婚気分に浸っている場合じゃない。急いで夕食の準備をしなくちゃ……。
食材を洗っていると、玄関のロックが解除された音が聞こえた。
帰ってきた!
急いで玄関に向かう。
「おかりなさい!」
「ただいま」
帰りを出迎えるのは今回で二度目だけど、まだ慣れない。
気恥ずかしさを感じつつ、樹先生が家に上がるのを待った。しかし、いつまで経っても靴を脱ぐ気配がない。
「どうしたんですか?」
玄関に立ったままでいる理由がわからず尋ねると、目の前の唇がゆっくり動いた。