独占本能が目覚めた外科医はウブな彼女を新妻にする
「はい!」
思いがけない誘いがうれしい。
いったい、どんなお店に連れて行ってくれるんだろう……。
まだ先の予定に早くも心を躍らせていると、看護師がこちらに向かって早足に進んで来るのが見えた。
「桐島先生。ちょっといいですか?」
その口調はとても焦っているように聞こえる。
もしかして患者さんが急変したとか?
こんなところで話し込んでいる場合じゃないのかもしれない……。
不安げに顔を上げると、樹先生が目を細めて白衣のポケットに手を入れた。
「手を出して」
「あ、はい」
言われた通りにすると、手のひらにイチゴ味のキャンディーがポトリと落ちた。
「気をつけて帰るんだよ」
「はい」
樹先生の手が頭の上にのり、ポンポンと優しく跳ねた。
また子供扱いされてしまったと思ったものの、大きな手の温もりはやっぱり心地いい。
束の間の幸せを噛みしめながら、白衣の裾をひるがえして廊下を進んでいく後ろ姿を見つめた。