独占本能が目覚めた外科医はウブな彼女を新妻にする
そうだ。マンションの下まで迎えにいこう。
リビングを後にすると、鍵がカチャリと開く音が聞こえた。
帰ってきた!
廊下を進み、玄関に向かった。
「おかえりな……」
膝に両手をあてて荒く呼吸を繰り返す樹さんに驚き、お出迎えの言葉が途切れてしまう。
「走って帰ってきたんですか?」
「うん。……華に早く……会いたかったからね」
息も絶え絶えになるほど、急いで帰ってきてくれるなんて……。
樹さんを愛しく思う気持ちが胸いっぱいに広がった。
「ありがとう。おかえりなさい」
「ただいま」
彼の首に腕を絡ませて背伸びをすると、おかえりなさいのくちづけを交わす。けれど唇が軽く触れるだけのキスでは物足りない。
自らもう一度唇を重ねると樹さんの腕が腰に回り、ブラウスの下に手が忍び込んできた。
あ、こんなところで……。
ここは玄関ホールだし、樹さんはまだ靴を履いたままだ。
素肌の上をすべる大きな手をブラウスの上から押さえると、深く重なり合っていた唇が離れた。
「ごめん、余裕なくて……」
「い、いいえ」
冷静沈着な彼が場所も考えずに早急に求めてくるのは、たしかに“らしく”ない。でも余裕がないのは私も同じ。今すぐ樹さんを感じたいと、心と体が訴えている。