独占本能が目覚めた外科医はウブな彼女を新妻にする
ステンドグラスが美しいチャペルに、厳かなパイプオルガンの音色が響く。
新郎新婦が永遠の愛を誓う様子は模擬挙式だとわかっていても、感動で胸が熱くなってしまった。
「素敵でしたね」
「そうだね」
余韻を引きずったまま試食のために案内されたレストランの席に着き、グラスをカチンと合わせてシャンパンに口をつけた。
小さな泡が口の中で弾ける。
「華」
「はい」
「お願いがあるんだけど……」
「はい。なんでしょう」
グラスをテーブルに置いて話に耳を傾けたとき、料理が運ばれてきた。
「おいしそう!」
「そうだね。じゃあ、いただこうか」
白いプレートに並ぶ色鮮やかな前菜を前に気分が上がる。けれど話はまだ途中だ。
「あの……お願いって?」
ナイフとフォークを手にした彼に話の続きを促した。
「……話は後にして、今は食事を楽しもうか」
口調は優しいものの、有無を言わせない雰囲気を醸し出す樹さんに食い下がることができない。
「……はい」
小さく返事をすると、料理を口に運んだ。