独占本能が目覚めた外科医はウブな彼女を新妻にする
その後も披露宴会場や控室などを案内してもらい、サロンで手続きを済ませるとホテルをあとにした。
「うちに来る?」
今の時刻は午後四時。夕食をとるにも家に帰るのもまだ早いし、樹さんともっと一緒にいたい。
「はい」
タクシーで樹さんのマンションに向かった。
家に上がり、ホテルからもらったお土産の袋を開けた。
「あ、フィナンシェですよ」
「おいしそうだね。コーヒーを淹れようか」
「はい」
キッチンに行き、樹さんがコーヒーを淹れている間にフィナンシェをお皿に移す。そしてリビングで、少し遅いおやつタイムをふたりで楽しんだ。
私たちの結婚式は来年の六月第三週の日曜日と決まった。ほかにも空いている日があったにもかかわらず、樹さんがその日がいいと即決したのだ。
「あの、どうしてその日がよかったんですか?」
「大安ってこともあったけど、俺にとってその日は結構重要な日なんだけどな」
「重要な日……」
サロンでは聞けなかったことを尋ねると、樹さんが意味ありげな笑みを浮かべた。
六月と聞いて連想するのは、ジューンブライドと梅雨くらいだ。樹さんがジューンブライドに憧れるはずがないし、梅雨が好きだという話は聞いたことない。