独占本能が目覚めた外科医はウブな彼女を新妻にする

「うん。パンダが見たいという悠太君のために、日曜日に上京して動物園に行くことにしたらしい。でも東京は慣れてないし、ふたりきりじゃ不安だから案内してほしいって、綾香に頼まれたんだ。けれど、どうしても仕事が休めなくて……」

樹さんが決まりの悪い顔をする。

私の知らないところでと連絡を取り合っている事実を知り、嫉妬で心が荒れ狂った。

元カノのお願いなんかキッパリ断って、と言いたい。けれど悠太君が絡むと、そうも言えない。

「……人混みとか大丈夫なんですか?」

一番気になるのは、悠太君の体調だ。

万が一、発作が起きてしまったら……。

悠太君が倒れる姿を想像しただけで、体が小さく震えてしまった。

「激しい運動は控えたほうがいいけれど、普通に過ごす分には問題ないから安心してほしい」

落ち着いた声は説得力があり、樹さんがそう言うのなら大丈夫なんだと信じることができた。

「わかりました。ふたりの案内を引き受けます」

「ありがとう」

曇っていた樹さんの顔に、ようやく笑みが浮かんだ。

綾香さんと関わりたくないというのが本音だけど、今回は仕方ない……。

自分を強引に納得させると無理に笑顔を作った。

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