独占本能が目覚めた外科医はウブな彼女を新妻にする
空は青く澄み渡り、寒くもなく暑くもない絶好の行楽日和の今日。上野駅の改札前で、綾香さんと悠太君が現れるのを待った。
金沢駅で少し会話を交わしただけの綾香さんと悠太君に気づけるかな……。
今になって、急に不安になってしまう。
ふたりの姿を見逃さないように、注意深く改札を見つめた。すると手を繋いで自動改札機を通る親子に目がいく。
長い黒髪をひとつに束ねている美人でスタイルがいいあの女性が、綾香さんで間違いない。
ふたりのもとに向かって足を進めた。
「綾香さん!」
「あ、華さん。休みなのに案内をお願いして、ごめんなさいね」
「いいえ、気にしないでください」
申し訳なさそうに謝る綾香さんの前で、首を左右に振った。
隣に樹さんがいないのは寂しいけれど、動物園に行くのは小学校の遠足以来。楽しまなくちゃ損だ。
「悠太くん、こんにちは」
「こんにちは」
目線に合わせて屈み込んで挨拶を交わす。
悠太君の顔色はとてもよくて、三日後に手術を控えているようには見えなかった。