独占本能が目覚めた外科医はウブな彼女を新妻にする
「動物園は人が多いから、迷子にならないように気をつけようね」
「うん!」
人懐っこい笑顔を見せる悠太君に手を握られる。
かわいい……。
温かい小さな手に、心が和んだ。
三人で手を繋いで動物園に向かい、ジャイアントパンダの列の最後尾に並んだ。
「素敵ね。その指輪」
列が少しずつ前に進むなか、綾香さんの視線が私の左薬指を捉える。
「ありがとうございます」
「もちろん、樹と一緒に選んだのよね?」
「はい。そうです」
どのリングにするか、なかなか決められなかったんだよね……。
ジュエリーショップに行った日のことを思い出しながら、エンゲージリングを見つめた。
「いいな。妬けちゃう」
「えっ?」
「樹と結婚するあなたがうらやましいわ」
口調は穏やかなものの、綾香さんの表情は冷ややかだ。
やっぱり綾香さんは、樹さんのことを……。
嫉妬にまみれた言葉を聞いたら、ずっと心の片隅にあった疑いを確認せずにはいられなかった。
「綾香さんは今でも樹さんのことが……好きなんですか?」
「好きよ。あなたと婚約したのが、なにかの間違いだったらいいと思っているわ」
「……っ!」
好きだと認めただけでなく、私たちの結婚を反対するような発言に衝撃を受けた。