独占本能が目覚めた外科医はウブな彼女を新妻にする

一日の業務が終わり通用口から外に出ると、灰色の雲が広がった空から雨がポツリポツリと落ちてきた。

昼間は降ってなかったのに……。

梅雨入りした空を、うらめしげに見上げた。

念のために持ってきた傘を差す。すると、樹先生がこちらに向かって歩いて来るのが見えた。

外来の患者さんが多ければ診察時間も伸びる。だから病院の休憩スペースで、樹先生の仕事が終わるのを待つことにしていた。

まさかのお出迎えがうれしくて、足もとが濡れることなど気にせずに駆け出した。

「もう、お仕事終わったんですか?」

「ああ。がんばって早く終わらせた」

樹先生が穏やかに微笑む。

そんなこと言われたら、私と食事に行くのが楽しみで仕方なかったように聞こえてしまうから困る。

「ありがとうございます」

樹先生の言葉に深い意味はない。勘違いしないようにと、心の中で自分に言い聞かせた。

「どういたしまして。じゃあ行こうか」

「はい」

仕事終わりに会って食事に行くなんて、デートみたい……。

空から落ちてくる雨粒を鬱陶(うっとう)しく思っていたことなどすぐに忘れ、心躍らせて駅に向かった。

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