独占本能が目覚めた外科医はウブな彼女を新妻にする

駅前のタクシー乗り場に到着すると、大きな手が腰に回った。エスコートに従って後部座席に乗り込む。

神楽坂(かぐらざか)まで」

「はい」

樹先生が行き先を伝えると、タクシーが静かに発進した。

白衣姿もカッコいいけれど、紺色のテーラードジャケットをサラリと着こなしている姿もとても素敵だ。

ん~、眼福……。

なにを着ても似合ってしまう樹先生を、横目でチラチラ見つめながら幸せに浸った。

「日本酒は飲めるよね?」

「飲んだことないです」

「それは珍しいな」

樹先生の二重の目が丸くなった。

飲み会で過去に一度、日本酒を勧められたことがあるけれど、あの独特な匂いがだめで口をつけることができなかった。

私だけじゃなく、日本酒が苦手な人って結構多いと思うけどな……。

「そうですか?」

「ああ。調教し甲斐があるな」

「……」

ちょ、調教!?

含み笑いをしてSっ気を醸し出す彼に、返す言葉が見つからない。

黙り込んでいると信号が赤になり、タクシーが止まった。

< 20 / 214 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop