独占本能が目覚めた外科医はウブな彼女を新妻にする
駅前のタクシー乗り場に到着すると、大きな手が腰に回った。エスコートに従って後部座席に乗り込む。
「神楽坂まで」
「はい」
樹先生が行き先を伝えると、タクシーが静かに発進した。
白衣姿もカッコいいけれど、紺色のテーラードジャケットをサラリと着こなしている姿もとても素敵だ。
ん~、眼福……。
なにを着ても似合ってしまう樹先生を、横目でチラチラ見つめながら幸せに浸った。
「日本酒は飲めるよね?」
「飲んだことないです」
「それは珍しいな」
樹先生の二重の目が丸くなった。
飲み会で過去に一度、日本酒を勧められたことがあるけれど、あの独特な匂いがだめで口をつけることができなかった。
私だけじゃなく、日本酒が苦手な人って結構多いと思うけどな……。
「そうですか?」
「ああ。調教し甲斐があるな」
「……」
ちょ、調教!?
含み笑いをしてSっ気を醸し出す彼に、返す言葉が見つからない。
黙り込んでいると信号が赤になり、タクシーが止まった。