独占本能が目覚めた外科医はウブな彼女を新妻にする
「今からでも遅くない。俺にしろよ」
「……へ?」
「俺なら、白石を傷つけるようなことは絶対しない」
思いがけない言葉を聞き、心臓が大きな音を立てた。
今、遠回しに告白されたような気がするけど、まさかね……。
本意がわからず、どのように答えればいいか悩んでいると、彼の腕が背中に回った。
同期である加藤君のことは嫌いじゃない。でも樹さん以外の人に抱きしめられるのはとても不快で、肌がぞわりと粟立った。
「いやっ!」
加藤君の胸に手をあてて力を込めて押し、彼から急いで離れた。
「……ごめん」
「……」
謝られても、不信感は拭えない。
今すぐこの場から逃げ出したい……。
じりじりと足を後退させていると、悠太君に貸したままだったジャケットが肩にふわりとかかった。
「悪いけど、華は誰にも渡さないよ」
「樹さん!」
突然、姿を現した樹さんに驚き、弾かれるように顔を見上げた。けれど彼の視線は加藤君を捉えたままだ。
「加藤君にはいろいろと助けてもらって感謝している。ありがとう。けれど華のことだけは絶対に譲れない」
樹さんの冷静な言葉が、辺りに響く。