独占本能が目覚めた外科医はウブな彼女を新妻にする
「勝手なこと言わないでくださいよ。白石以外の女と抱き合っていたくせに」
加藤君が吐き捨てるように言った。
体を寄せてきたのは綾香さんのほうからだし、樹さんは彼女を抱き留めていない。
「あれは彼女が勝手に抱きついただけで……」
ふたりが『抱き合って』いたのではないことを説明しようとしたものの、樹さんに言葉を遮られてしまった。
「華。どんな理由があったにしても、隙を見せた俺が悪い」
「樹さんはなにも悪くないです!」
「ありがとう」
樹さんがニコリと笑う。
余計な言い訳をしない彼を男らしく思った。
「綾香には俺たちの邪魔をしても無駄だって、ハッキリ言ったから」
「……そうですか」
「うん」
思いを寄せている人に拒否されるのはつらいだろう。けれど、このまま嫌がらせを続けても、私たちのお互いを思う気持ちは永遠に変わらない。
いつか綾香さんが、私たちの結婚を心から祝福してくれる日が訪れるといいな……。
そう願いながら、樹さんと微笑み合った。