独占本能が目覚めた外科医はウブな彼女を新妻にする
「あのさ……。俺の存在、忘れてない?」
「あっ」
加藤君の冷ややかな視線が痛い……。
ふたりの世界に入り込んでいたことを恥ずかしく思いながら、樹さんから慌てて離れた。
「ったく……」
加藤君が、あきれながらも小さく笑う。
あ、いつもの加藤君だ……。
険しい表情が緩み、ホッと胸をなで下ろした。
「桐島先生。失礼なことを言って、すみませんでした」
加藤君が頭を下げる。
「いや、不愉快な思いをさせてしまって悪かったね」
「いいえ」
誤解が解けてよかった……。
安堵してふたりの様子を見つめていると、加藤君と目が合った。
「この際だからぶっちゃけるけど、俺、白石のことが好きだから」
加藤君が、爽やかな笑みを浮かべる。
彼の思いはうれしい。けれど私が好きなのは樹さん、ただひとりだ。
「ありがとう。でも……ごめんなさい」
視線を落として頭を下げた。
「瞬殺かよ」
「……」
「まあ、いいや。気持ちを伝えられてスッキリしたし……」