独占本能が目覚めた外科医はウブな彼女を新妻にする
チョコよりも甘く
翌日の午後。樹さんから悠太君の手術が無事成功したというメッセージが届き、ホッと胸をなで下ろした。けれど悠太君の顔をこの目で見ないと落ち着かない。
仕事が終わると小児病棟に急いで向かった。
「こんばんは」
綾香さんに小さな声をかける。
「あ、華さん。昨日はありがとう」
「いいえ」
ベッドに横になっている悠太君を覗き込んだ。
細い腕に点滴のチューブが繋がれている姿が痛々しいものの、規則正しい寝息を立てていて、容態は安定しているように見えた。
「手術無事に終わってよかったですね」
「ええ。樹には感謝してるわ」
綾香さんが愛おしそうに悠太君を見つめた。けれどその横顔は血色が悪く、少し疲れているように見える。
「あの、私が悠太君のそばにいますので、少し休んでください」
入院してからひとりで悠太君につき添い、疲れもピークに達しているはずだ。
「元カノの私に親切にするなんて、あなたって本当にお人好しね」
コーヒーを飲んだり、外気に触れるだけでも、気分転換になる。そう思って声をかけたけれど、余計なお節介だったようだ。
少しでも役に立てればと思っただけなのに……。