独占本能が目覚めた外科医はウブな彼女を新妻にする

「いつもと雰囲気が違うな」

「えっ?」

私の目を見つめていた視線が徐々に下がっていき、爪先にたどり着いた。

「普段よりも大人っぽい」

童顔がコンプレックスな私にとって『大人っぽい』は最上級の褒め言葉。瞬く間に心臓が早鐘を打ち、頬がカアッと熱くなってしまった。

「あ、ありがとうございます。樹先生も素敵です」

「そうか? ありがとう」

あたふたする私とは違い、微笑みながらサラリとお礼を言う。

その慣れた様子を見たら、さっきと同じようなやり取りを、今まで多くの女性と交わしてきたんだろうな、と思った。

褒め言葉は社交辞令。お世辞を真に受けてしまったことが恥ずかしい。まだ高鳴る鼓動を鎮めるために彼から視線を逸らすと、雨に濡れる景色を窓から見つめた。

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