独占本能が目覚めた外科医はウブな彼女を新妻にする

「あの……。お仕事、まだ終わってないんですよね?」

「うん」

「そろそろ医局に戻ったほうがいいんじゃないですか?」

「華とキスしたら戻るよ」

「えっ?」

マイペースに話を進める樹さんを信じられない思いで見つめると、端整な顔が近づいてきた。

「目、閉じて」

「こ、こんなところでダメです」

首を大きく左右に振って、抵抗する。

「どうして?」

「だって、誰かに見られるかもしれないし……」

「誰もいないよ」

「でも……」

樹さんの言う通り、待合室には私たちしかいないとわかっていても、もしかしたらという思いが拭えなかった。

「俺とキスするのは嫌?」

「そんなことないです」

「だったら、目を閉じて」

「……はい」

ダメと言いつつ最後まで抗うことができなかったのは、私もキスを望んでいるからだ。

瞼を閉じると、温かい唇がふわりと重なった。

樹さんの職場でこんなことしたら、いけないのに……。

後ろめたさを感じる一方で、このままキスが終わらないでほしいと願っている自分がいる。

少し強引な樹さんも大好き……。

甘いくちづけを交わしながら、束の間の幸せに酔いしれた。

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