独占本能が目覚めた外科医はウブな彼女を新妻にする

「ん、おいしい」

すっきりとした味わいと、フルーティーな香りがする吟醸酒はとても飲みやすい。再び口をつけると、樹先生がクスクスと笑った。

「こらこら。そんなに早いペースで飲むんじゃない」

「あ、はい」

そうだった。今日は大人のお酒の飲み方を教わるんだった。

グラスをテーブルの上にコトンと置き、そのときを静かに待った。けれど肝心の彼は朗らかな笑みを浮かべて料理を味わって、お酒を飲むだけ。

いつになったら教えてくれるのだろうと思っていると、ようやく視線が合った。

「ん? どうした?」

「今日は大人のお酒の飲み方を教えてくれるんでしたよね?」

酔ってみっともない姿をさらすのは、もう二度とごめんだ。

これからは“酒は飲んでも飲まれるな”をモットーに、スマートにお酒をたしなむ女性になるんだから。

「そんなの口実だ」

樹先生の唇の端が上がる。

「口実?」

「ああ」

意味がわからず首をかしげていると、笑みが消えた。

「今日、華ちゃんを食事に誘ったのは大事な話があるからだ」

樹先生が空になったグラスをテーブルに置いて、正座をする。

< 24 / 214 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop