独占本能が目覚めた外科医はウブな彼女を新妻にする
「な、なんでしょう」
急に改まった態度を取られたうえに、意味深なことを言われては平常心ではいられない。
いったい、どんな話があるのかと身がまえると背筋を伸ばした。
「俺と結婚してほしい」
「……はい?」
今、変な言葉が聞こえたような……。
まだ少ししかお酒を飲んでいないのに、もう酔っ払ってしまったのかもしれない。
そう思いながら、私に向けられた真剣なまなざしを見続けた。
「俺と結婚してほしいんだ」
形のいい唇が、さっきと同じように動く。
えっ? なに言ってるの?
突拍子もないプロポーズのような言葉を聞き、一瞬頭が真っ白になってしまった。けれど、どうしてそのようなことを言い出したのか、すぐに理解した。
「もう酔っちゃったんですか?」
酔っているのは私じゃなくて、樹先生のほうだ。だから『結婚してほしい』と、意味不明なことを口走ってしまったのだろう。
テーブル越しに様子をうかがった。
「俺がたった一杯の酒で酔うわけがないだろ」
樹先生がまばたきを数回繰り返し、ハハッと短く笑う。
たしかに私と違い、お酒を飲み慣れている彼が簡単に酔うわけない。
それじゃあ、結婚してほしいっていうのは本気ってこと?