独占本能が目覚めた外科医はウブな彼女を新妻にする

料亭でプロポーズされてから二週間が経った六月最終週の日曜日の午後。

うちに訪れたスーツ姿の樹先生が「華さんとの結婚をお許しください」と両親に頭を下げた。

突然の申し出に驚いた父親と母親が、鳩が豆鉄砲を食らったような表情でお互いの顔を見合わせた。けれど彼を気に入っている両親は、すぐに私たちの結婚を許してくれた。

「しかし、驚いたよ」

自宅の応接間で父親が豪快に笑う。

「そうよ。華ったら、なにも言わないから」

「……ごめんなさい」

チクリと嫌味を言った母親に、軽く睨まれてしまった。

挨拶に訪れることを前もって伝えられなかったのは、私自身が彼と結婚するのを、いまだに信じられずにいるからだ。

好意を持たれていると感じたことは、今まで一度もない。それなのに私と結婚しようとするなんて、やっぱりおかしい。きっと裏があるに違いない。

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