独占本能が目覚めた外科医はウブな彼女を新妻にする
そんな思いが日に日に大きく膨らみ、今も頭にこびりついて離れずにいる。
どうして私なんだろう……。
両親と樹先生が談笑している様子を、ぼんやり見つめた。
「病院は誠が継いでくれるし、華の結婚相手も決まった。これでいつ引退しても安心だな」
父親が満足そうな笑みを浮かべるのを見て、ハッと気づく。
私と結婚して院長になる兄と義理の兄弟になれば、副院長の座を狙いやすい。樹先生は私を利用して、出世しようとしているんだ……。
企みを知り、背中に嫌な汗が滲むのを実感した。
今回の話は一度白紙に戻したほうがいい。
そう思ったものの上機嫌な父親の顔を見たら、この場で腹黒い彼の思惑を暴露するのが正しいことなのかわからなくて、黙ったまま考えにふけった。