独占本能が目覚めた外科医はウブな彼女を新妻にする

「樹先生。いつも勉強を見てくれて、ありがとうございます」

恥ずかしい気持ちを堪えて、チョコが入った袋を差し出した。

きっといつものように優しく微笑んで『ありがとう』と言って、チョコを受け取ってくれるはず。

そう思っていたのに……。

「……これって、もちろん義理チョコだよね?」

凛々しい眉を下げて困った表情を浮かべる。

この反応は予想外で、本音がポロリと出てしまった。

「違います! 本命チョコです」

フラれたら、今後どんな顔をして会えばいいのかわからない。だから告白するつもりなんかなかった。

(はな)ちゃん、ごめんね。これは受け取れない」

ひと回り年上の樹先生が、中学生の私を相手にするわけがない。それにイケメンの彼は絶対モテる。きっと本命チョコは、彼女からしか受け取らないと決めているんだ。

「……迷惑かけてごめんなさい」

ひとりで勝手に盛り上がってバカみたい……。

頭を下げると、その場から一目散に逃げ出した。

< 3 / 214 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop