独占本能が目覚めた外科医はウブな彼女を新妻にする
「樹先生。いつも勉強を見てくれて、ありがとうございます」
恥ずかしい気持ちを堪えて、チョコが入った袋を差し出した。
きっといつものように優しく微笑んで『ありがとう』と言って、チョコを受け取ってくれるはず。
そう思っていたのに……。
「……これって、もちろん義理チョコだよね?」
凛々しい眉を下げて困った表情を浮かべる。
この反応は予想外で、本音がポロリと出てしまった。
「違います! 本命チョコです」
フラれたら、今後どんな顔をして会えばいいのかわからない。だから告白するつもりなんかなかった。
「華ちゃん、ごめんね。これは受け取れない」
ひと回り年上の樹先生が、中学生の私を相手にするわけがない。それにイケメンの彼は絶対モテる。きっと本命チョコは、彼女からしか受け取らないと決めているんだ。
「……迷惑かけてごめんなさい」
ひとりで勝手に盛り上がってバカみたい……。
頭を下げると、その場から一目散に逃げ出した。