独占本能が目覚めた外科医はウブな彼女を新妻にする
「わかりません。今まで指輪を買ったことも、もらったこともないので……」
「へえ、そう」
「……はい」
二十四歳にもなって、恋愛経験ゼロの事実を情けなく思った。
「今度の休み、一緒に指輪を見に行こう」
指の間に樹先生の長い指がすべり込んでくる。
これって、恋人繋ぎだ!
サイズを確認するのとは違う濃密な触れ方に、鼓動が高鳴った。
好きな人に触れられるのって、こんなに幸せな気分になるんだ……。
指の間から伝わる温もりを心地よく思いつつ、隣にいる樹先生を見上げた。
口もとに微かな笑みを浮かべる横顔に街灯の光があたり、通った鼻筋が強調されてとても美しい。
ずっと、このままでいたいな……。
樹先生をひとり占めできる喜びに浸った。
「やっぱりダイヤがいい?」
「……えっ?」
「エンゲージリングだよ」
端整な横顔に見惚れていた私を、樹先生がクスッと笑う。
永遠の愛の象徴であるダイヤモンドへの憧れは強い。