独占本能が目覚めた外科医はウブな彼女を新妻にする
ハートジュエリー本店から出ると、すぐに手を握られた。
エンゲージリングを一緒に選び、手を繋いで銀座を散策するなんて、まるでラブラブの恋人みたい。
これって、デートなのかな?
思いがけないシチュエーションに胸を高鳴らせて隣を見ると視線が合った。
「どこか寄ってみたいところある?」
新しい服やシューズなど、ほしい物はたくさんあるけれど、高級ブランドショップが立ち並ぶ銀座で買い物ができるほど、私のお給料は多くない。
「とくには……」
首を左右に振る。
「それなら家まで送るよ」
「えっ?」
銀座の有名な時計台の針は、午後五時三十分を指している。
まだ太陽が沈んでいないのに、もうお別れしなければならないなんて寂しすぎる。もっと一緒にいたいのに……。
ふたりの温度差にショックを受けて肩を落とした。
「冗談だよ。少し早いけど食事に行こうか?」
「はい!」
「いい返事だ」
樹先生がハハハッと笑い声をあげた。
彼のひと言で、気分が沈んだり上がったりしてしまう単純な自分に、我ながらあきれてしまった。
「この先にフレンチレストランがあるんだけど、そこでいいかな?」
「はい。もちろん」
すぐに行き先を決めてリードしてくれる樹先生を頼もしく思った。