独占本能が目覚めた外科医はウブな彼女を新妻にする

ハートジュエリー本店から出ると、すぐに手を握られた。

エンゲージリングを一緒に選び、手を繋いで銀座を散策するなんて、まるでラブラブの恋人みたい。

これって、デートなのかな?

思いがけないシチュエーションに胸を高鳴らせて隣を見ると視線が合った。

「どこか寄ってみたいところある?」

新しい服やシューズなど、ほしい物はたくさんあるけれど、高級ブランドショップが立ち並ぶ銀座で買い物ができるほど、私のお給料は多くない。

「とくには……」

首を左右に振る。

「それなら家まで送るよ」

「えっ?」

銀座の有名な時計台の針は、午後五時三十分を指している。

まだ太陽が沈んでいないのに、もうお別れしなければならないなんて寂しすぎる。もっと一緒にいたいのに……。

ふたりの温度差にショックを受けて肩を落とした。

「冗談だよ。少し早いけど食事に行こうか?」

「はい!」

「いい返事だ」

樹先生がハハハッと笑い声をあげた。

彼のひと言で、気分が沈んだり上がったりしてしまう単純な自分に、我ながらあきれてしまった。

「この先にフレンチレストランがあるんだけど、そこでいいかな?」

「はい。もちろん」

すぐに行き先を決めてリードしてくれる樹先生を頼もしく思った。

< 34 / 214 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop