独占本能が目覚めた外科医はウブな彼女を新妻にする

私、なにか変なこと言っちゃった?

樹先生の真剣なまなざしを不安げに見つめた。

「医者という仕事は急な呼び出しも多いし、当直もある。今日のように華ちゃんをひとり残して病院に向かわなければならないことも、この先またあるかもしれない。それでも俺と結婚してくれるか?」

低い声が暗がりに響き渡った。

二度目のプロポーズのような言葉が心に染み入る。

「樹先生? 私を誰だと思ってるんですか。東京赤坂病院の院長の娘ですよ。忙しい父親の姿を見て育ったので、お医者さまがどれほど大変な職業なのか理解してます」

唇をキュッと結び、彼を真っ直ぐ見据えた。

「華……。ありがとう」

樹先生が私の名を呼び捨てにして、フッと笑う。しかしそれも束の間、笑みが消え、端整な顔が徐々に近づいてくるのが見えた。

こ、これってまさか……。

戸惑いながらキスの予感に身がまえると、やわらかい唇が頬にそっと触れて離れた。

「……っ!」

心臓が狂ったようにドクドクと暴れ出す。

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