独占本能が目覚めた外科医はウブな彼女を新妻にする
樹先生が参加してくれたらうれしい。でも西野さんも私も幹事ではないし、家族以外の人を誘っていいのかわからない。
黙ったまま様子をうかがった。
「俺は部外者だから遠慮するよ」
樹先生が首を左右に振る。
一緒にバーベキューを楽しめないのは残念だけれど、無理して参加してもきっと気を遣う。でも西野さんは、どうしてもあきらめきれないようだ。
「そんなこと言わないで参加してくださいよ。仕事もお休みなんですよね?」
西野さんが樹先生の腕に、さりげなく触れた。
そういえば西野さんは、樹先生狙いだったっけ……。
彼のことをカッコいいと言い、彼女がいるのか気にしていたことを思い出した。
これを機に親しくなろうという下心がミエミエな様子を見ていたら、モヤモヤした感情が胸にいっぱいに広がってしまった。
樹先生に馴れ馴れしく触れないで。お嫁さんになるのは、この私なんだから……。
心の中で嫉妬の炎をメラメラと燃やした。
「またの機会にね。はい、おすそわけ」
樹先生が、西野さんの手をやんわりと振り払う。
女の人に言い寄られても、デレデレしない毅然とした態度がうれしかった。
「……ありがとうございます」
樹先生が差し出したイチゴ味のキャンディーを、西野さんが受け取った。