独占本能が目覚めた外科医はウブな彼女を新妻にする
ふぅ~! 生き返る!
冷たいキャラメルフラペチーノをひと口飲むと、ホッと息をついた。
今、私は駅前にあるカフェの奥の席で、西野さんと向き合って座っている。外の厳しい暑さから逃れられても、西野さんの不機嫌なまなざしからは逃れられない。
「で? 桐島先生と付き合ってるの?」
西野さんがグラスに注がれたアイスコーヒーを、ストローでクルクルとかき混ぜる。
「はい。プロポーズされました」
エンゲージリングはまだサイズ調整中だし、結納も交わしてない。けれど、私は樹先生の婚約者だ。
胸を張って打ち明けると、西野さんの眉がつり上がった。
「は? 私、白石さんに桐島先生って彼女いると思うって、聞いたよね? あのとき、わかりませんって言ったのは、嘘だったの?」
西野さんが言う『あのとき』とは、薬局にふらりと現れた樹先生からキャンディーをもらった日のことだ。その帰り道で『彼女、いると思う?』と聞かれて、『わかりません』と、たしかに答えた。
「あのときは、本当にわからなかったんです」