独占本能が目覚めた外科医はウブな彼女を新妻にする

西野さんと別れて家に帰ると、ベッドにポスンとダイブした。

『就職先も結婚相手も好きに選べて』という西野さんの言葉が、今も頭にこびりついて離れない。

あんな嫌味など気にすることないし、早く忘れたほうがいい……。

大きなため息をつくと、スマホが音を立てた。

ベッドから起き上がり、バッグの中からスマホを取り出す。

「えっ? 樹先生?」

さっき会ったばかりなのに、どうして……。

驚きつつ、急いで応答ボタンをタップした。

「もしもし」

『俺だ。今大丈夫?』

「はい。樹先生はもうお仕事終わったんですか?」

『いや、まだだ』

「……そうですか」

忙しい樹先生の体調を気にしながら耳を澄ませた。

『……なにかあった?』

「えっ?」

『声に元気がないから』

まだ少ししか会話を交わしていない。それのに、私が落ち込んでいると気づいてくれるなんて……。

驚きで一瞬息が止まった。

西野さんとの間にあった出来事をすべて話し、慰めてもらいたい衝動に駆られてしまう。

< 51 / 214 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop