独占本能が目覚めた外科医はウブな彼女を新妻にする
「大丈夫だよ。華は俺が勤めている病院の院長令嬢で、薬科大学を優秀な成績で卒業した才色兼備な女性だと親に説明しておいたから安心して」
樹先生が再びクスッと笑った。
「えっ?」
大学は真面目に通ったけれど、優秀な成績で卒業したと言われると肩身が狭い。それに私は残念ながら才色兼備ではない。
ご両親には気に入ってもらいたいけれど、嘘をつくのはよくない。
不安げに樹先生を見つめた。
「冗談だよ。親には、ひと回り年下のかわいらしいお嬢さんだと説明したから。父親も母親も華に会えるのを楽しみにしているよ」
こんなときに冗談なんか言わないでほしい……。
一瞬、ムッとしたものの、軽口をたたいたのは私の緊張をほぐすためだと気づいた。それに『かわいらしい』と言われたら、お世辞だとわかっていても悪い気はしない。
「……ありがとうございます。うれしいです」
歓迎してくれるのはありがたいけれど、それはそれで変なプレッシャーを感じてしまう……。
実家に到着するのは数時間後なのに、今度は身なりが気になって肩先まである髪を落ち着きなく整えた。