独占本能が目覚めた外科医はウブな彼女を新妻にする

挨拶が無事に終わり、ハーブティーとお母様の手作りパウンドケーキをいただきながら、私の仕事やお互いの家族について会話を交す。そして話題は、結婚に関することに移っていった。

「結納と結婚式の日取りはもう決まっているの?」

「まだ。決まったら連絡するよ」

樹先生とお母様の会話を聞いていたら、結婚の現実味が帯びてきた。

結納の日取りと場所、結婚式や新居に新婚旅行など、この先決めなければならないことがたくさんある。

これから忙しくなりそうだな……。

心の中でうれしい悲鳴をあげた。

その後も会話は弾み、楽しい時間が過ぎていく。

「すみません。お手洗いをお借りしてもいいでしょうか」

我慢しようかと思ったものの、自然現象には逆らえない。会話が途切れたタイミングを見計らって申し出た。

「どうぞ、こちらよ」

「ありがとうございます」

お母様の案内でリビングを出た。

トイレに入ると、ほのかに漂う匂いに気づく。

いい香り……。

辺りを見回すと飾り棚に、ポプリが入ったガラスポットが置かれていた。鮮やかなピンクの花びらは薔薇(ばら)だろうか。もしかしたら、庭で咲いたものなのかもしれない。

ハーブティーも自家製らしいし、手作りパウンドケーキもしっとりしていて、とてもおいしかった。

後でガーデニングやパウンドケーキのことについて、詳しく聞いてみようかな……。

そんなことを考えつつ、リビングに戻った。

< 70 / 214 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop