独占本能が目覚めた外科医はウブな彼女を新妻にする
金沢駅に到着したタクシーから降りると、手を引かれて構内を進んだ。
新幹線の発車時刻まで、まだ余裕がある。
「お土産でも見る?」
「はい」
樹先生のご両親から手土産をいただいたものの、職場や美咲にもお土産を用意したいと思っていた。
なにがいいか考えて歩いていると、握られていた手がスッと離れた。
急にどうしたんだろう……。
不意に足を止めた彼の視線の先を追う。すると数メートル先に、小さな男の子と手を繋いでいる女性の姿があった。
白いTシャツとジーンズ、長い黒髪をひとつに束ねたラフな格好にもかかわらず目を引くのは、美人でスタイルがいいからだろう。
ここは樹先生の地元だ。知り合いとバッタリ会ってもおかしくない。
クラスメイト? テニス部の仲間? それとも……。
ふたりがどんな関係なのか気にかけていると、こちらに近づいてきた彼女の瞳が丸くなった。
「樹じゃない! 久しぶりね。元気だった?」
「ああ。綾香も元気そうだね」
「うん。おかげさまで」
ふたりが下の名前を呼び合って、親しげに会話を交わす。