独占本能が目覚めた外科医はウブな彼女を新妻にする
お土産を片手に、行きと同じグランクラスの車両に乗り込んだ。
シートに座ると、ほどなくして新幹線が動き出す。
「急がせてしまってごめん」
「いいえ。樹先生のアドバイスのおかげで迷わないで済みました。ありがとうございます」
お土産売り場には、金沢銘菓と謳ったお菓子がズラリと並んでいた。
金沢出身である彼の「これ、おいしいよ」というひと言がなかったら、いつまで経ってもお土産を選ぶことができず、発車時刻に間に合わなかったかもしれない。
どんなときでも頼りになる樹先生を心強く思った。
ホッとひと息つくと、綾香さんの顔が頭に浮かんだ。
思い切って彼女との関係を尋ねてみようか。でも過去のことを詮索されるのは、気持ちのいいものじゃないよね……。
なかなか心が決まらず、話を切り出すことができなかった。
「昔、付き合っていたんだ」
まるで私の心を見透かしたようなタイミングの告白に驚き、目を見張った。
“誰と”が、なくても彼の言いたいことはわかる。