独占本能が目覚めた外科医はウブな彼女を新妻にする
「……そうじゃないかって思ってました」
綾香さんが元カノではないかと疑っていたことを、素直に打ち明けた。しかし、ふたりが恋人だったという過去を知ってしまったら平常心ではいられない。
心の奥で燻っていた嫉妬心に火が点いてしまい、唇を尖らせて視線をプイッと逸らした。
「もしかして妬いてる?」
「……っ!」
顔を覗き込んできた彼の唇の端が、少しだけ上がっているのが見える。
余裕を見せる樹先生とは対照的に、元カノに嫉妬してしまったことが子供っぽく思えて、そうだと認めることができなかった。
カッコいい彼には背が低くて童顔な私よりも、綾香さんのように美人でスタイルがいい女性が似合う。
婚約者だと紹介くれたのに、どうしても自分に自信が持てず、涙がジワリと込み上げてきてしまった。
「あ、ごめん。嫌な思いさせたね」
綺麗な綾香さんが元カノだったという事実にショックを受けて嫉妬した挙句に、樹先生を困らせてしまった……。
「樹先生は……なにも悪くないです。……私のほうこそ、ごめんなさい」
涙ながらに謝った。