独占本能が目覚めた外科医はウブな彼女を新妻にする
「……樹先生が……迎えにきてくれから大丈夫」
「じゃあ、エレベーターの前で待とうか」
「……ありがとう」
体を支えてもらい、イスからゆっくり立ち上がるとバーベキューテラスをあとにした。
エレベーター前にあるベンチに腰を下ろし、樹先生が到着するのを待つ。
「つらいだろ? もっと俺に寄りかかれよ」
「……うん」
肩に回った加藤君の腕に力がこもり、体を引き寄せられた。
「あのさ、こんなときに言うのもどうかと思うけど……。俺、白石のことが……」
加藤君の体にもたれかかって耳を澄ましても、話の内容が頭に入ってこない。
ますます強くなる眠気に抗えず目を閉じると、ポンというエレベーターの到着音が聞こえた。重い瞼を開けた先に、待ち焦がれた人の姿が見える。
「……樹先生」
力を振り絞ってベンチから立ち上がった。けれど脚に力が入らず、膝から崩れ落ちてしまった。
「華!」
床に倒れ込みそうになった私の体を、樹先生が抱き留めてくれる。
会いたかった……。
愛しい人の温もりを感じた瞬間、意識が徐々に薄れていった。