独占本能が目覚めた外科医はウブな彼女を新妻にする
「気がついた?」
「……っ!」
目覚めて一番初めに見えるのが、眉目秀麗な顔というのは心臓に悪い。
ベッドの上で横になったまま驚きの声も出せず、固まってしまった。
「起き上がれる?」
「あ、はい」
手を借りて上半身を起こす。
「このお水をゆっくり飲んで」
「はい」
差し出されたグラスを受け取り、言われた通りにゆっくりとお水を飲んだ。
「どう? 気分は悪くない?」
樹先生に顔を覗き込まれる。その心配そうな表情を見たら、先ほどの出来事が一気によみがえった。
「わ、私……」
自分の身に起きたことを説明したいのに、頭が混乱してしまって思うように話ができない。
「大丈夫だ」
樹先生が私の隣に腰を下ろし、逞しい腕が背中に回る。不安を消し去りたい一心で、温かい胸に頬を寄せると瞼を閉じた。
バーベキューを楽しんでいただけなのに、どうしてこんなことになってしまったのだろう……。
「うっ……」
やりきれない思いが涙となって頬を伝った。
肩を震わす私の頭を樹先生がなでてくれる。その優しさに甘えて、声をあげて泣いた。