独占本能が目覚めた外科医はウブな彼女を新妻にする

しばらくすると、取り乱していた気持ちが徐々に落ち着いてきた。もう涙は出ないし、体の震えも止まった。

「心配かけてごめんなさい」

「無理してない?」

「はい」

「そうか。よかった……」

樹先生が安心したように大きく息をつく様子を目にしたら、申し訳ない気持ちが胸いっぱいに広がった。

「加藤君からだいたいのことは聞いたけど、もう一度なにがあったのか詳しく聞かせてくれないか?」

お医者さまである樹先生なら、突然調子が悪くなった原因についてなにかわかるかもしれない……。

「はい。ビールを少し飲んだら急に体に力が入らなくなって、眠くなってしまったんです。だから樹先生に電話をかけて……あれ? ここは?」

記憶をたどっていくうちに、自分が今どんな状況なのか理解していないことに気づいた。

「ここは俺のうちだから安心して」

「そ、そうでしたか」

樹先生がひとり暮らしをしていることは以前から知っていたけれど、部屋に上がったことはない。

大きなベッドとモノトーンで統一された寝具、そして窓際に背の高い観葉植物が置かれているこの部屋は寝室なのだろう。

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