約束の数だけ
あれは寒い日だった。もう春だというのに、突然冷え込んだおかしな天気の日だった。
透花は部屋で本を読んでいて、穏やかに温まった心地よい部屋の中で、何も知りはしなかった。
悲劇が起こるなんて微塵も感じさせないような空気の中で愛犬がまどろんでいるのを微笑んで眺めているような、そんな時間を過ごしていた。
だが、それは起こった。
静かな静かな空気の中に聞こえた、母の悲鳴。
「何…?」
そう呟いて、外に出た。
そして、廊下を抜けた先。
「ママ…?」
ボコボコと変色した顔、周りに飛び散った血と薬品。
人とも思えないように変えられた両親が、倒れていた。
「ママ!!パパ!!」
認識した瞬間に発された自分の声に驚く。
自分の声で現実に再度気づかされる。