私が月を支配するとき、貴方は嗤う
SIDE:将暉





俺は今日、近々起きる抗争の注意喚起で理事長に会いに来た。正直前までは抗争はあっても注意喚起などしてなかった。だが、最近一般人も巻き込む邪悪な奴らも居るので注意してもらわなければならないのだ。

琥珀の幹部全員を連れて理事長室に行った。
「俺正直理事長ちょっと苦手だなー」
のんびりした口調で話す爽と
「あー、それは思うな。何考えてるのか読めねぇーし」
大輝が理事長のことを話していた。確かにそう思うのも仕方ない。最強と謳われた暴走族の初代総長だ。会話に適当に相槌を打ちながら一応理事長室の扉をノックした。だが、返事はない。居ないのか。そう思いながらも理事長室の扉を開けた。扉を開けるとソファーにいる生徒がこちらを見ていたが直ぐに寝てしまった。

生憎理事長不在で連絡をしたら少しで着くということだったのでそのまま理事長室で待った。
「なぁ。あの子知ってるか?」
爽が不思議そうに聞いた。
「知らない。」
俺はそう返し、ソファーで寝てるヤツの方を見た。
艶やかな黒髪にほんのり赤い唇。筋のとおった鼻に白い肌。スカートから出たスッと長くて細い足。 
どこを見ても完璧だった。

今まで散々女を見てきた。腐るほど見てきてどいつもこいつも同じなんだと思っていた。というよりは女が嫌いだった。すぐに目の色を変えて媚を売ってくる女ばかりで、納得の行かないことがあるとすぐに、怒る。女などその程度だと思っていた。
だけど俺はソイツに興味が湧いた。同じ女なのに何故かも分からない。
俺の中に名前の分からない感情が芽生えてしまった。


  












SIDE:夏




寝ようと思っていたら睡眠を邪魔され思った以上に寝ることが出来なかった。
なんか喋るし大人しくしてればいいのに、煩いし、こんな中で寝れる方がすごいと思った。
耳を澄ませているとシークレット通路の方から音がした。やっとマヌケ(航)が帰ってきた。絶対絞めると思いながら入ってくるのを待った。


「ごめんお前ら。待ったか?」
シークレット通路から入って来た航は反省の色が全く見られない。少しくらい反省の色を見せろよ!とか思いながら小さくため息をついた。
「いや、大丈夫です。」
「今日はどうした?お前らが来るって珍しいな。」
「っ????ってかコイツずっといたのか?」
不良と話していたかと思えば、私にやっと気付き大きな声をあげ驚いたように不良たちに聞いた。
その声があまりにも煩く面倒だったので私は不良達より早く答えてあげた。
「寝てた、ずっと。それにコイツって誰の事言ってるの??ってかうるさい。寝てるのわかんない?」
やっと起きました。風に言い、目を覚ました。
「あっ!!ごめん。夏!!悪気はないんだ!」
「だからいちいち声がでかい」
本当は少し苛めてあげようかと思ったけどなんか背中に視線を感じるから止めた。後ででも十分苛めれるし!
航があたふたしているのを内心馬鹿にしながら見ていた。

「航大さん、、この人は???」
不良の一人がその様子を見かねて声をかけた
「ん?あぁ、、彼女?彼女は3年の名井さん。」
「何でここに???」
まぁ気になるよね。とか思いながらも自分の正体がバレるのは本当に困るので軽く航を睨んだ。口止めのために。しないとは思うけど一応ね。
「それは、、、、こ、この子に俺から用事があって呼んでたの。そう、気にしないで!、」
いかにも怪しい返事を不良達にした。
航は生徒を理事長室に入れないのに。本当に航って嘘つくの下手。とか思いながら別に間違ってはないから黙ってその様子を見ていた。
「で、何でお前らがいるんだ?」
航はコロッと話を変え、不良達に聞いた。
おいおい。不良達。理由も告げずに居たのかよ。
「あっ、そうだった。多分ここ一週間以内から一ヶ月の間にかけて小さな抗争が町の外れ付近であります。その喚起で、来ました。」
「あ、あぁ。分かった。怪我をしないように気を付けろよ。生徒には言っとくから。」 
「お願いします。」
不良たちも話を本題に戻し、要件だけ伝えると理事長室から出ていった。



ドアが締まり数分後. . .
「おい。航。何で入れた?ってか、なんで遅刻するんだよ!まぁ、いつものことだからどーでもいいけど」
「いや、ごめんな。夏。その遅刻したのには理由があって、、」
「その理由が酒の飲み過ぎで二日酔いして朝起きれなくて気持ち悪くて家で休んでて遅くなったとか言ったら一発殴るけど?」
「ごめんなさい。そのとおりですね。でも殴らないでー!」
叫びながら私に抱きついてくる航はいつも以上にキモく、酒臭かった。
「うるせぇな。分かったから離れろよ」
耐えれず言うと、危険を察知したのか素早く離れた。

「なんでアイツらがここに居たの?」
イライラしながら、航に聞くと
「いや、何ででしょうね」
とか言うから一発殴ってやった。
「真面目に答えろ。何でいたんだよ。」
「さっき、用事があるからって連絡されてまさか夏がいるとは思わずに理事長室で待っとけ。って言ってました。だからです。」
伏せがちに言った航を横目で見ながら呆れたと言わんばかりにため息をついた!。これ以上話しても疲れるだけだなー。そう思い何も答えなかった。
「でもな、夏、、アイツら悪い奴らではないんだぞ?全国No.1のK....」
「知ってる。全国No.1の琥珀でしょ。潰した族は数知れず。全国を統一する正統派グループでしょ。」
「さすが。名前は知ってるか?」
「調べれば一発だけどあんなやつらの情報知って得しないから。まず、人に興味すらないし。」
「そうだよな。まぁ、そこまで敵視するなよ。」
「…………わかってるよ」
一応ハッカーだから、族の情報は知っている。
それは、将来のためにも。
ただ、族の個人情報なんかはっきり言ってどうでもいい。ブラックリストに載ったら別だがそれ以外は自分から興味を持つ限り調べない。

「今日の仕事は?」
「あぁ。いつもありがとな、会議資料とさっきのやつらが言ってた抗争の喚起の資料よろしく。」
「ん。」
それだけ返事をすると、45ページの会議資料を一時間で、抗争の資料は15分で終わった。
「航、終わったからここに置いとく。確認して。」
「夏早いな?流石。ゆっくりしてて。」
「言われなくてもそうする。アイツらのせいでさっき寝れなかったから。おやすみ」

そう言うとソファーに移動し横になるとすぐに眠りについた。



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